人間性を堕落させる魔王の兵器
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決して希望を失ってはなりません。
より安全でより正気の世界、
すべての核兵器廃絶の世界に向けての努力を
決して諦めてはなりません(P123)
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『詩集 神の涙 ―広島・長崎原爆 国境を越えて』は、米国を拠点に核廃絶運動を続けるデイヴィッド・クリーガー氏の詩集である。本書が初めての邦訳詩集だと思う。英語で書かれた原詩と日本語訳、長崎市での講演(2010年2月)を収録。前回紹介した「被爆者は偶然の出来事ではない」も収めている。
クリーガー氏は、核廃絶への思いをシンプルな言葉で紡ぐ。核兵器の悪魔性と悲劇性を端的な表現で突く。ネルーダやロルカなどスペイン語詩人の比喩的表現を好み、小林一茶や松尾芭蕉など日本の俳人のシンプリシティを愛する氏ならではの詩句といえるかもしれない。
「地球上には今なお17000発を超える核弾頭があり、オーバーキル状態は変わらない」
(「核兵器・核実験モニター」第430-1号 2013年9月1日)
核の脅威は昨日の悪夢ではない。私たちは明日にでも、核による人類の滅亡を目の当たりにするかもしれない。米国防長官としてキューバ危機を経験したマクナマラは、ドキュメンタリー映画「フォッグ・オブ・ウォー」で当時を振り返り、「核戦争に至らなかったのは、ただ運が良かったからだ」「その危険は今もある」と語っている。現在はキューバ危機当時より核の拡散が進み、核によるテロも懸念されている。「運が良かっただけ」という証言は、重く受け止めるべきだろう。
兵器はいずれも悪魔の持ち物だが、核兵器は魔王に属する。「それは正気の降伏であり、暗黒と鎮圧へのあこがれである」(「その爆弾」P38)。核兵器の存在を容認することは、「私達の人間性を堕落させている」(「核兵器に反対する十の理由」P104)ことに他ならない。だから、「誇りを持って未来の世代に受け渡し得る世界を創造するために私達は核兵器の撤廃と廃絶を必要としているのだ」(P11)。
クリーガー氏は被爆者へのノーベル平和賞授与を訴え続けている。本書に収録された講演でも「広島と長崎の被爆者たちへのノーベル平和賞を訴え続けて欲しい」(P117)と述べ、「被爆者の声を空と地球上すべてにこだまさせましょう」(P116)と呼びかけている。これまで過去のノーベル平和賞受賞者などにより、「日本原水爆被害者団体協議会」などが平和賞候補として推薦されている。2015年は原爆投下から70周年の節目。ノーベル委員会の賢明な選択に期待したい。
※クリーガー氏が会長を務める
核時代平和財団のホームページ
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決して希望を失ってはなりません。
より安全でより正気の世界、
すべての核兵器廃絶の世界に向けての努力を
決して諦めてはなりません(P123)
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『詩集 神の涙 ―広島・長崎原爆 国境を越えて』は、米国を拠点に核廃絶運動を続けるデイヴィッド・クリーガー氏の詩集である。本書が初めての邦訳詩集だと思う。英語で書かれた原詩と日本語訳、長崎市での講演(2010年2月)を収録。前回紹介した「被爆者は偶然の出来事ではない」も収めている。
クリーガー氏は、核廃絶への思いをシンプルな言葉で紡ぐ。核兵器の悪魔性と悲劇性を端的な表現で突く。ネルーダやロルカなどスペイン語詩人の比喩的表現を好み、小林一茶や松尾芭蕉など日本の俳人のシンプリシティを愛する氏ならではの詩句といえるかもしれない。
「地球上には今なお17000発を超える核弾頭があり、オーバーキル状態は変わらない」
(「核兵器・核実験モニター」第430-1号 2013年9月1日)
核の脅威は昨日の悪夢ではない。私たちは明日にでも、核による人類の滅亡を目の当たりにするかもしれない。米国防長官としてキューバ危機を経験したマクナマラは、ドキュメンタリー映画「フォッグ・オブ・ウォー」で当時を振り返り、「核戦争に至らなかったのは、ただ運が良かったからだ」「その危険は今もある」と語っている。現在はキューバ危機当時より核の拡散が進み、核によるテロも懸念されている。「運が良かっただけ」という証言は、重く受け止めるべきだろう。
兵器はいずれも悪魔の持ち物だが、核兵器は魔王に属する。「それは正気の降伏であり、暗黒と鎮圧へのあこがれである」(「その爆弾」P38)。核兵器の存在を容認することは、「私達の人間性を堕落させている」(「核兵器に反対する十の理由」P104)ことに他ならない。だから、「誇りを持って未来の世代に受け渡し得る世界を創造するために私達は核兵器の撤廃と廃絶を必要としているのだ」(P11)。
クリーガー氏は被爆者へのノーベル平和賞授与を訴え続けている。本書に収録された講演でも「広島と長崎の被爆者たちへのノーベル平和賞を訴え続けて欲しい」(P117)と述べ、「被爆者の声を空と地球上すべてにこだまさせましょう」(P116)と呼びかけている。これまで過去のノーベル平和賞受賞者などにより、「日本原水爆被害者団体協議会」などが平和賞候補として推薦されている。2015年は原爆投下から70周年の節目。ノーベル委員会の賢明な選択に期待したい。
※クリーガー氏が会長を務める
核時代平和財団のホームページ
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