星空に真理を見る

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あゝ今にして私は悟る あらゆる可能性が
ほのかな豫感の中にときめき潜むのを
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ロマン・ロランの研究者として知られた仏文学者、蛯原徳夫の自筆詩稿である。夜空に輝く星々を通し、驚きと喜びを込めて、世界の真理の一端を示している。それはロランの代表作である『ジャン=クリストフ』の一節、「調和――それは愛と憎しみとの崇高な結合! 力強いふたつの翼をもつ《神》を私は頌め歌おう。生を讃えんかな! 死を讃えんかな!」を思い起こさせる。

【星空】

蛯原徳夫

黒地(くろじ)の無限に燿(かがよ)いうかぶ星々を
私は欣びと畏れとのこゝろで見つめる
この世のすがたを見そめ始めて
おどろきの瞳を瞠(みは)る幼児のように

灼熱して宙を翔け奔るものたちが
あれほどにも涼しく閑(しず)かに見える
あゝ今にして私は悟る 悲しみが
澄み清まった泪となって流れるのを

想いを絶するほど大きなものたちが
あれほどにも小さく瞬(またた)いて見える
あゝ今にして私は悟る あらゆる可能性が
ほのかな豫感の中にときめき潜むのを

虚空のかぎり離れ合ったものたちが
あれほどにも整然と斉(ととの)って見える
あゝ今にして私は悟る 愛と憎しみとが
創造的な一つの輪となって循(めぐ)るのを

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