晩年の再婚

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あなたにお知らせしたいことがあります。
驚かせてしまうでしょうが、私の再婚についてです
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フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。スイスのヴィルヌーヴで書かれたもので、1934年5月7日付。パリの Paul Mulon 博士に、自身の再婚について報告している。このときロランは68歳、再婚相手のマリー・クーダチェフは39歳(ロランの初婚についてはこちら)。

マリーの父親はロシア軍将校、母親はフランス公爵家の家庭教師だった。マリーの最初の夫クーダチェフ公爵は、ロシア軍将校として従軍の末、幼い息子セルゲイを残して病死した(再婚によりセルゲイはロランの息子となるが、ナチスとの戦いで亡くなる)。ロランの人生においてマリーとの再婚は、ソ連との関わりという点でも重要な出来事だった(関連記事はこちらこちら)。

ロランの死後、マリーはロランの日記や書簡類を「カイエ・ロマン・ロラン」として刊行した。1968年には「ロマン・ロラン展」(主催=読売新聞社)に合わせて来日。亡くなったのは1985年で、つい最近のことのように思える。「カイエ・ロマン・ロラン」はマリーの死後も刊行が続けられ、1996年に第30巻が出た。

【書簡本文】
あなたにお知らせしたいことがあります。
驚かせてしまうでしょうが、私の再婚についてです
――善を成すのに遅すぎるということはない――
私は数年来の友人であり、
私の仕事を献身的に支えてくれた
マリー・クーダチェフ夫人と再婚しました。
彼女の母親はフランス人で、
1920年にコーカサスの内乱で亡くなった
クーダチェフ公爵の未亡人です。
彼女は一人、幼い息子を抱えて、
内戦の過酷な期間を勇敢に生き抜いてきました。
この子は現在17歳になり、
熱意と知性をもってモスクワ大学で学んでいます
(彼は航空力学に携わりたいと願っています)。
私の妻も非常に勤勉です。庭いじりをすることで、
事務仕事の気晴らしをしています。

あなたと妹さんに
彼女を紹介できる日が来ることを楽しみにしています。
妹さんにはあなたから、友情の思い出とともに
この知らせを伝えてください。
マドレーヌ(※ロランの妹)は
あなたたちに再会できて喜んでいました。
私も同行したかったよ。

愛情を込めてあなたの手を握ります。
あなたの忠実な古い友

ロマン・ロラン

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