稀代の蒐集家の記録

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コレクターが個性的であれば、
そのコレクションもそれぞれの特性を持つが、
凡庸であれば、ただのカタログと化してしまう。
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オーストリアの作家シュテファン・ツヴァイクは、作家として高名だっただけでなく、歴史上の偉人たちが遺した自筆原稿や遺品の蒐集家としても知られていた(こちらに関連記事)。本書『Ich kenne den Zauber der Schrift』(2005年/ウィーン Inlibris 刊)は、そんなツヴァイクと自筆蒐集をテーマにした論説に加え、約1000点におよぶツヴァイク・コレクションの目録と、ツヴァイクによる草稿「Die Autographensammlung als Kunstwerk (芸術作品としての自筆コレクション)」の複製を付録に持つユニークな一冊。冒頭の「コレクターが個性的であれば…」という一文は、草稿に書かれていたものだ。

本書に収録されたツヴァイク・コレクションのカタログを見るだけでも、個人のコレクションとしては群を抜く規模と内容を誇っていたことが分かる。文学的・歴史的に価値の高い自筆類・記念品がそろっており、欧米をつくりあげた精神の流れを俯瞰できる「芸術作品」と言ってもいいように思う。ユダヤ人であるツヴァイクのコレクションに、アドルフ・ヒトラーの演説草稿が含まれているのも興味深い。ロマン・ロランやリルケ、ヘッセなど、友人に著名な作家も多く、本人から直接贈られた草稿類が多いのも特徴だ。

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本書の付録 ツヴァイクの草稿(複製)

【ツヴァイク・コレクションのカタログから】

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アドルフ・ヒトラーの演説草稿

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ゲーテ「ファウスト」第二部のための草稿

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ゲーテの書簡およびゲーテとシラーの髪の毛

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カントの随筆断片

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ニーチェ詩稿

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フロイト「詩人と幻想」草稿

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ダーウィン「人間の由来」断片

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ライプニッツ草稿

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マリー・アントワネット自筆書簡

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ロベスピエール草稿

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ナポレオン 宣言の草案

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レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿

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ウィリアム・ブレイク「キング・ジョン」

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ホイットマンの随筆草稿

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ユゴーとイプセンの草稿

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ヘルマン・ヘッセ「干草の月」草稿

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ロマン・ロラン「クレランボー」草稿

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ベートーヴェン「エグモント」草稿

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モーツァルト「すみれ」草稿

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バッハ「われいずこに逃れ行かん」草稿

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ショパン草稿

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グスタフ・マーラー「交響曲第2番」のためのスケッチ

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リヒャルト・ワーグナー「さまよえるオランダ人」断片