正しさ求める青年詩人の独白

~~~~~~~~~~
清新で、高貴で、水々しい月が、
星のしぶきの中をわたつて
静かに登る。(「六月の夜」P20~21)
~~~~~~~~~~

DSC08198.jpg

『自存 上田秋夫詩集』は、高知県出身の詩人・上田秋夫の処女詩集である。1927年(昭和2年)刊。上田は1899年(明治32年)生まれだから、28歳のときに出たものだ。亡き母親に捧げられている。

DSC08199.jpg
上田自筆の献呈署名が入っている

誰かの手で「歌はぬ人」と書かれたメモが挟み込まれていた。たしかに、上田の詩は「歌」ではないかもしれない。上田自身が序で述べているように、「これはロマン ロランのいふ『すべてを在るがまゝに見、且つ愛する』道を得た内面的記録」であり、「一つの祈り」なのだろう。

詩句は単純・素朴で感想文のように見えることもあるが、鮮やかな言葉の閃きに出合うこともあり、捨てがたい。世界の豊かさと人生の実相に眼を開き、「見えない星々が空の向ふにちらばつて/さんさんと燃えしきるやうに/私も此処にひとりゐて/羲(ただ)しく、強く生きたいのだ、/永遠の光を浴びたいのだ」(「真昼の祈り」P127~128)と願う、青年詩人の独白。