詩が生まれる場所

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春のなかには死の匂いがある。
死の伝言が 大地から
朽ち葉の湿りから
枝々から たちのぼる。
そうだ、この匂いのなかからしか
生命が現れ出ることはないのだ、
この疼(うず)きのなかからしか
歓喜は生まれてこないのだ
(「詩法の幻想曲『春の嵐』」P57)
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「エウリディケ」について

1979年12月に発行された第3号には、フランスの詩人マルセル・マルチネの「愛の詩集」から6篇、詩人・片山敏彦の詩編「出会」、清水氏の「詩法の幻想曲『春の嵐』」を収める。

「幸福とか不幸とか、それはただの言葉だ。
私たちのなかのこの充ち満ちた沈黙は言葉以上のものだ。
沈黙が意味を定めるとき、そこから言葉が消え去る」
(マルセル・マルチネ P12)

「私たちの至高の努力を夜がやさしく包み、
眠っている現実の彼方で
私の存在の無限をあなたの無限な存在に結び合わせる。
もう私にはわからない、私があなた自身でないのかどうかが」
(マルセル・マルチネ P13)

「お前は輝く大きな白鳥のやうに羽ばたいて
わしの考へを、行為の光の中へ新しく生んだのだ」
(片山敏彦 P30)

【「詩法の幻想曲『春の嵐』」から】
「これではない
これではないと
ついいましたがたの
自分を拒みながら
すぐそこに
新しい自分を
つくり出そうとする」(P41)

「いまはただ この渦巻く動きの中心に
自らを据えて
上昇する旋回のなかを
どこまでも落下する。
すべてが動きであり
熱い風の踊りであるのに
荒れ狂うリズムに自分を合わせていると
ふしぎなことに 自分が
新しい静かさの中心にいるかと思う(中略)

私にはみえてくる、
新しい約束の萌生えが。
落下の奥底から現れ出てくる
この若々しいおもかげ、
幾千年の時間の堆積から
つねにういういしく現れ出るものよ!」(P46~47)