苦痛と祈りと浄福と
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人生は苦悩によって深くまた神々しい(P39)
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本書はドイツ・フランス文学者で詩人の片山敏彦が、病床で綴った言葉を集めた遺稿集である。片山の死から約2カ月後の1961年(昭和36年)12月、遺族の手で発行された。私家版で非売品。「右半身と言葉の自由を失った父が、没する数日前まで示していたものは、苦痛ではなく、感謝でした。この小冊子を通して皆様への父の感謝をお伝えしたいと思います」(P53)と記されている。
「青空に
朝日昇りて照ることを
頌むる心は
やむときもなし」(P2)
「おそるべき愛なる神の
みこころのうつはとならん
ただにそれのみ」(P3)
「あかつきに
めざめて思ふ
うつしみの
いのちにひゞく
神のこだまを」(P3)
「とこしえに
咲ける光の
みなもとに
映れる生と死は
一つなり」(P5)
「レアリテの内面化はメタフィジック化である」(P14)
「光の群が来る。
遠くから来る。
世界の
ほんとうの
調和の道を」(P15)
「舟は神の海を
かたむいて進む。
舟が沈むなら
それは神の海にしづむ。
まだ沈まないなら
神のシンボルを
はこぶ」(P19)
「おん母に
ただに祈りて
暗き夜を
生くるうつしみ
はるかなる
空のおくがに
慈悲の眼は
消ゆることなし」(P21)
「人の子がよみがえるとき
よろこびに空は高鳴る。
あたらしき霊つよまりて
おのづから愛の光を
時を超えみなぎらしめん
おん母の慈悲の泉に
ゆたかなるいのち息づく
病んでいるのは
あわれなからだ
だが
いのちが
めざめて
みなぎって
勝つのだ
よみがえるものよ
来たれ
霊の歌とともに
ユニテの勝利よ
きたれ」(P22~23)
「こころみの中に愛あり
きずつきし者はいやされ
いと高きいこいは慈悲の
おん母のうちにこそあれ
聖霊はつよくはゞたき
あらたなる光をぞ生む
行く道は
いかにありとも
わが行くは常にふるさと」(P25)
「心を祈りに充たせ
たゞそれのみ」(P28)
「絶望は
大敵
苦痛の穴から
天を
のぞく」(P29)
「この苦しみの細道に
咲き香れ
神へのほめ歌。
深夜の、孤独の苦しみに
宿れ
いと高く、いと広く
常にある神の調和の歌のこだま」(P33)
「魂が
はばたき始める」(P37)
「私を愛してくれる
友らに感謝。
光の感謝」(P38)
「一人一人の魂に
祝福あれ」(P38)
「夏が大空の中に
花火のようにひらき
きらめく花々は
地上に神の衣を飾る」(P40)
「この世の夏が
かゞやく花々を咲かせ
その花々が眠る時間には
星々が空に咲く」(P43)
放射線の副作用と不眠に悩まされ、右半身の麻痺が加わる。そのときが近づくにつれ、片山の言葉は神への祈りに満ちてくる。
「もはや、神を思うこと以外のことは無意味である」(P49)
そして絶筆。
「光へのセレニテの郷愁」(P50)
人生いかに生くべきかという命題は、死から出発しなければ解けないのではないか。人間は死とともにあるときのみ真実であり、死を忘れた人生に本当の充実はないと思う。
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