詩聖の人間的な一面

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表面的にあなたが思うほど
私は善良な人間ではない
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インドの詩聖ラビンドラナート・タゴールの自筆書簡である。ベンガル歴1321年スラボン月6日(1914年7月ころ)に書かれたもの。手紙の送り主がどんなことを書いて寄こしたのか分からないが、よほど腹に据えかねたのか、タゴールは送り主をたしなめている。タゴールは1913年、詩集『ギタンジャリ』によりアジア人で初めてノーベル文学賞を受賞しており、遠慮も礼儀も知らない手紙が世界中から押し寄せていたのかもしれない。詩聖のイメージと少し違う人間的な一面が垣間見えて面白い。

「あなたの大胆不敵さには実に驚かされます。
あなたは、相手が著名人だと思い立てば時を選ばず手紙を書く。
そこに何の躊躇もないのですから。
著名な方々があなたのことを、
いつの日か赦してくれることもあるかもしれませんが、
そのためには謝罪の気持ちを何通も何通も綴らなければならないでしょう。
しかも、たとえあなたの一通の過ちが
何百通もの手紙によって洗い流されることがあったとしても、
ほんのわずかな救いにしかならない、
ということをわきまえておくべきでしょう。
表面的にあなたが思うほど私は善良な人間ではない、
ということをどうぞお忘れなく。

ベンガル歴1321年スラボン月6日

ラビンドラナート・タゴール」