偉人の自筆に触れるよろこび

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手紙はそれ自身、歴史であると同時に、
ロマンと幻想を生み出す不思議な媒体でもある
(「手紙にまつわるロマン」P95)
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『ヨーロッパ 歴史の中の手紙』は、著者の根本謙三氏が蒐集した歴史を彩る偉人たちの自筆書簡を紹介した一冊である。1984年刊。アンデルセン、ユゴー、フランツ・リスト、ダーウィン、ナポレオン、エジソン、ナイチンゲールなど、38人の偉人の肖像と略歴、自筆書簡の写真で構成されている。現在ほど海外との往来が容易でなく、商用インターネットもなかった時代に、よく集めたものだと感心する。

巻末の「手紙にまつわるロマン」と題した随筆では、「世界の歴史に残る人々の手紙をぢっと見つめていると、その内容はよく分からなくとも、それらを自分の手で書いた偉大な人達の姿が彷彿として浮び上り、その波瀾万丈の生涯が、走馬燈のように脳裡を去来して、想像の世界は無限に拡がってゆく」(P95)と、自筆書簡の魅力について語っている。

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敬愛する人物の自筆に触れることは、時間の彼方に没したアイドル(偶像)に肉薄することである。それが書かれた瞬間に立ち会い、偉人と対面しているかのような感覚に陥る。なかなか理解されない嗜好かもしれないが、自筆に魅せられた人々は、現代の日本にも少なからず存在していることだろう。