時代を超えて伝わる息遣い

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(手で書いた)文字には生命が宿っている。
だから文字は恐くて楽しい。そしてなによりも美しい(P151)
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『フランスのオトグラフ』は、「日本におけるフランス年(1998)」の公式イベント「フランスのオトグラフ~自筆(オトグラフ)の手紙や原稿から見えてくる! 43人の等身大の芸術家たち~」展を記念して出版された。フランスの歴史を彩る国家元首や思想家、文学者、画家、音楽家などの自筆書簡や草稿、デッサンなどをカラー写真付きで紹介した一冊である。

「オトグラフ(Autograph)」とは、ギリシア語で「自分自身の」を意味する「autos(オトス)」と、「書く」を意味する「graphein(グラフェイン)」の合成語。日本語では「自筆」「肉筆」「真筆」などと訳される。自筆を尊重する欧州の文化は中世以来のものらしい。

本書は37点のオトグラフを掲載している。例えば、作品を酷評された音楽家ベルリオーズに宛てて友人のヴィクトル・ユゴーが書き送った手紙――。

「感動が心の底からこみ上げてくるなかで、あなたの作品を聴きました。あなたは、美しく気高いことを成し遂げられたのです。私は聞こえてくるすべての音に満たされて、感動しています。歌いなさい、あなたは歌うために生まれてきたのですから。そして叫ぶために生まれてきた人たちには、叫ばせておけばよいのです。

巨匠よ、勇気をお持ちなさい。神の摂理は、背負う重荷をご存知です。偉大な精神には、大きな障害があるものです。しかし忘れてはなりません、障害は乗り越えるために在るのです」(P28)

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仕上げられた作品とは違う、偉大な人々の息遣いまで感じられるのがオトグラフの大きな魅力なのだろう。

「時代の空気を呼吸しつつ生き残ってきた紙の上には、喜び、希望、ためらい、怒り、痛み、励ましなど人物の『生の声』が定着し、今日のわたしたちの眼前に時空を超えて等身大の姿で甦ってくる」(P4)

「『オトグラフ』とは、単に天才たちの文字を愛でるのではなく、オリジナルの文字のエネルギーを通して歴史や人物に近づき深めていくという『ひとつの視点』『通路』であると私は思う」(P153)