友人の仲を取り持つ

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人が孤立するのは
決して喜びからではありません。
誇りがあるから、
そうせざるを得ないから孤独になるのです
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フランスの作家ロマン・ロランの自筆書簡である。1922年2月19日付。愛弟子ジャン・ド・サン=プリの弟であるピエール・ド・サン=プリに宛てたものだ。

第一次世界大戦中の日記に、ロランは「いつも、私は友人相互間に和解を回復させなければならない」と記した。本書簡ではまだ21歳のピエールに対し、思うに任せない人生を投げ出さずに生きてきた、詩人P・J・ジューヴへの理解を促している。

※みすず書房『ロマン・ロラン全集【29】』所収「戦時の日記3」蛯原徳夫ほか共訳 P1237

【意訳】
きみはジューヴと仲良くあろうとして、
かえって悲しませてしまったのでしょう。
きみに「喜んで孤立している」などと言われたら、
少し辛辣な皮肉に感じるはずです。

どういうつもりですか? トスカーナのことでしょうか?
やむなく故郷を離れ、流浪の身となり、
わが子が重病になっての不安と快癒しての喜び――。
それは並大抵のことではありませんよ。

それとも詩集を103部印刷させたことでしょうか?
もしそうなら、ああ友よ、
現代の詩人が置かれている物質的な状況から
「孤立」しているのはきみの方です。
私はジューヴが、この出版のために費用を負担したことを知っています。
きみは1000部とか1万部とか刷ればいいのにと思っていませんか?
その費用を一体誰が出すのですか? 出版社は出しませんよ。
このご時世に売れる当てもなく、
出版社にも属さずに詩を印刷させることがほとんど不可能なことは、
きみも疑いのないところでしょう。
私もペギーに出会って、そのことを知りました。
人が孤立するのは決して喜びからではありません。
誇りがあるから、そうせざるを得ないから孤独になるのです(後略)

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